特集

FEATURE

1. 西山酒造場

西山酒造場は1849(嘉永2)年に創業を開始した歴史ある酒蔵。

山と川、田んぼに囲まれた自然豊かな立地で、創業当時から清流竹田川の伏流水を使用し、酒造りを行っています。
西山酒造場では蔵見学も行っているので、さっそく見学してみたいと思います。(要予約)

入り口では「処是解憂境」の文字が刻まれた石碑がお出迎えしてくれます。
これは「日々起こるさまざまな出来事への憂いをどうやって晴らすのか、それができるのは酒だけである」という意味で、酒造りに集中するため、入蔵する際に心構えを忘れないようにするものなんだそう。
気持ちを切り替える門のような場所なんですね。
またご来蔵いただくお客様には憂いを解き「お酒のユートピア」へご案内する意味もあります。
さらに写真の前方左側に写っているのは笹の葉。
新酒ができると、この場所とお店である主屋の玄関に笹を立てます。
昔はお酒のことを「ささ」と呼んでいたこともあり、西山酒造場では「三」という数字を大切にしています。
お酒の銘柄である小鼓のマークも小さい鼓が三つ描かれている他、代々子供に名付ける際には三の文字を必ず入れるそう。

ちなみにお酒などの商品ラベルや蔵に至るまでデザインは、芸術家である綿貫宏介氏が手掛けています。

写真左側の酒蔵も綿貫宏介氏の監修です。

酒蔵内には仕込水に使用する水が出る井戸があります。

12〜13メートルの深さがあり、水質は軟水。軟水で造る日本酒は優しくやわらかく仕上がると言われているそう。
漫画「美味しんぼ」にもこの水が登場するぐらい名水なんだとか。

ちなみに、2014年にこの地域で起きた水害の際、土砂が流入するなど、酒蔵も甚大な被害を受けました。しかし、酒造りには欠かせないこの井戸は奇跡的に無事だったそうです。さらに、この災害をきっかけに、被害にあった地域の田んぼを借り、酒米造りにもチャレンジすることに。
年を追うごとに借りている田んぼの数も増え、「兵庫北錦」と「但馬強力」という酒米を蔵人たちの手によって栽培しています。

兵庫北錦は甘みが強く、甘酒にも使用するお米。
但馬強力はふくよかで旨口に仕上がる特徴があり、純米大吟醸酒に使用。
高級酒の好適米として有名でしたが、育てる事が難しく戦後に栽培が途絶。2000年、地域ブランドを高める取り組みとして、地元農家や農協と連携し、減農薬無化学肥料栽培で復活させました。
お酒の種類によって酒米も使い分けているんですね。

酒蔵にはたくさんタンクがあるのですが、何度も上書きされた文字からは長きにわたって大切に使われていることが伝わってきました。
真ん中の上書きされた漢数字が味わい深いです。

次に向かったのは登録有形文化財に登録された主屋と場塀。
現在、主屋はお酒などを販売するお店として活用されています。
表には石碑があり、「ここに美酒あり 名づけて小鼓といふ」という俳人 高浜虚子の言葉が彫られていて、俳句ファンの方もこの石碑を見に訪れるようです。

店内にはお酒がずらりと並んでいます。
お酒の瓶もラベルも種類によって様々。
これは、日本酒は本来、酒器に移し替えて飲むことが基本とされていましたが、瓶のまま食卓に置いても馴染むよう、デザインにこだわって造っています。

最後に、女将の西山桃子さんにお話を伺いました。

「自分が女将をやるからには、楽しみながらどんどん新しいことをしていきたい。」
との想いからいろんなことにチャレンジしている桃子さん。
女将になってから行っている、様々な取組についてお聞きしました。

まずは一緒に酒造りを行う仲間づくり。
日本酒は男性のイメージが強いですが、若者や女性、海外の方にも知ってもらいたいという気持ちから、積極的に女性や海外の方を採用しています。今ではおよそ半分が女性で若い方が中心となっています。

次にお酒造り。
西山酒造場では、「みんなで造ってみんなで売る」を念頭に置き、出荷前には社員全員で利き酒をして評価します。通常であれば杜氏が味の最終判断を行うことが多いのですが、ここでは全員が認めたお酒のみを販売しています。そうすることによって、みんなが責任感を持って酒造りをすることができます。
過去には、評価の結果、販売しなかったお酒もあったとか。

さらに、若い職人の発案も積極的に採用しています。

これは「小鼓 モンテオエステ ジン」というお酒。
丹波名産の食材のみを原材料としたジンなのですが、全員が一丸となって試行錯誤の末、造り上げました。
若い職人とベテランの職人が助け合いながら造る体制が整っているんですね。
そのおいしさから、令和元年度の丹波すぐれもの大賞を受賞しています。

さらに女将が自信作とおすすめしてくれたのは「丹波小鼓 美白酵酒」。
私も飲んでみたのですが、栓を開けた瞬間、シュワシュワ〜という泡と共に、フルーティーな香りがふんわり広がります。
香りだけで、絶対美味しいと確信。
一口飲むと、上品な甘みと酸味で、強すぎない程よい炭酸感のバランスが絶妙で、まるでフルーツのお酒を飲んでいるような感じがします。
原材料がお米と米麹、水のみなのが信じられません。炭酸ガスも酵母の発酵から生まれたもの。
日本酒と言えば和食のイメージが強いのですが、このお酒は和食だけでなく、洋食など、いろんな料理に合いそうな味わいです。
口当たりも良く、すっと入って来るので、お酒が苦手な方にもおすすめしたくなるお酒。
こちらも令和2年度の丹波すぐれもの大賞を受賞しました。

最後にお酒以外の商品開発。

お酒が飲めない方にも米の発酵を知ってもらいたいと、子どもも飲める甘酒ヨーグルトから、地元の名産品である丹波栗と黒豆を使い、焼き上げてから焼酎に浸したスイーツ、甘酒粕エキスを配合したフェイシャルマスクまで多岐に渡ります。
「どれも、自分が欲しいものを造ったんです。」
女将の「欲しい」を徹底的に追求して造った商品たちは、思わず手に取ってみたくなるものばかり。

お話をお聞きする中で印象的だったのは「伝統を守るためにはチャレンジし続けることが大切なんです。」という言葉でした。
伝統を守ると聞くと、「昔から同じことをずっとやり続ける」という印象が強いのですが、時代の流れと共に新しいものをどんどん取り入れることで、その時々の伝統の残し方があることを知りました。

次はどんな商品が生まれるのか。女将が吹かせる新しい風は楽しみを運び続けています。

西山酒造場本社の離れである三三庵(ささあん)は、1942(昭和17)年に建てられました。

緑との共生をテーマとした建物を多数手掛けてきた、奈良県出身の赤松修氏が設計。
木造平屋で、室内には和室と洋間がある数奇屋風建築物。
とても落ち着いた雰囲気で、周りには色鮮やかな植物が植えられています。

昭和初期には、蔵の屋号である「小鼓」の命名者である俳人 高浜虚子をはじめとした平福百穂(ひらふくひゃくすい)、小川芋銭(おがわうせん)などの文化人が、サロンとして使用していたそう。
現在は日本酒や食、田園風景等を楽しみながら滞在できる宿泊施設にリニューアル中(夏頃オープン予定)。
※現在、一般公開されていません。

施設名 西山酒造場
住 所 丹波市市島町中竹田1171
TEL 0795-86-0331(平日9:00~17:30)
URL

http://www.kotsuzumi.co.jp/officialweb/

営業情報 9:00~17:30(土・日・祝は10:00~16:00)
駐車場
アクセス JR福知山線「丹波竹田駅」から徒歩約10分。
舞鶴若狭自動車道「春日IC」から約15分

2. 鳳鳴酒造

丹波篠山市の城下町には、篠山城跡や茅葺き屋根の武家屋敷など、様々な歴史ある建物が立ち並んでいます。

「鳳鳴酒造 ほろ酔い城下蔵」もその一つ。

1797(寛政9)年に創業した歴史ある酒蔵です。現在、清酒製造は市内の味間蔵に移転。築200年を超える旧本社社屋は国登録文化財となっており、ショップや酒蔵見学施設として活用されています。

鳳鳴と書かれた青い暖簾をくぐって酒蔵見学に向かいます。
ずらりと並ぶ酒造りに使われた道具たち。神聖な酒造りの場に足を踏み入れた実感が増します。

年季の入った壁や床、梁からは、長年酒造りを行っていた空気感も感じられます。

道具だけでなく、洗米場や麹室など実際に使っていた現場も見ることができるのも売りの一つ。

各道具や現場には説明が書かれており、どのように造られていたのかが一目で分かるので、酒造りのことを知らなくても楽しむことができます。
酒蔵内を見学していると、他では見ることのできない、とても珍しい音楽振動醸造装置を発見しました。

近づいてみましょう。

1996(平成8)年から作られている音楽振動酒の醸造過程の一つで、トランスデューサーという音を振動に変える装置を使用。醸造しているタンクに取り付け、音楽の振動をお酒の酵母に与えることでお酒の分子が細かくなり、マイルドな味になります。
聴かせている音楽は3種類。
1曲目はモーツァルトの曲の中で、最も激しいと言われている交響曲第40番
2曲目は優雅で柔らかい印象のベートーベンの交響曲第6番「田園」
3曲目は丹波篠山の民謡である「デカンショ節」
相談役が音楽をされていたことから生まれたアイデアだそうです。
ゆらぎの旋律といわれるモーツァルト。音楽の心地よさをお酒で酔う心地よさの連想からモーツァルトを。
ベートーベンはタイトル「田園」から、篠山の田園風景を重ねあわせて。
デカンショ節は、やはり丹波篠山と言えば外せないと言うことで(ただ、ちょっとチャレンジ案件だった模様)。

酒蔵見学を終え、脳内が日本酒モードになったところで、お待ちかねのショップへ。
これぞ日本酒というものから色彩豊かなお酒やここでしか買えないグッズなど、見ていて楽しくなる陳列です。

こちらの手前の2本は地元食材を使って造られたお酒。
写真右にあるのは丹波黒豆で造ったキュール楼蘭(ローラン)。
この透き通るようなピンク色は黒豆から出た天然色素なんだそう。
すっきりした味わいで、まるでワインを飲んでいるようです。

左側はマロンデキッスという丹波栗のお酒。
甘酸っぱく、バニラアイスにかけて食べたい一品。

お酒が飲めない方にはこちら。

アルコールが入っていない、ひんやりと冷えた「ささやまサイダー」がおすすめ。
爽やかなレモン味で程よい炭酸のシュワシュワ感があります。
すっきりとした後味で、とても飲みやすいサイダー。

ちなみに鳳鳴酒造では、お酒以外にもグッズ等を販売中。

こちらはトートバッグとTシャツ。

お酒の蓋を使った手作りのマグネット
そして、酒蔵めぐりの楽しさを倍増させてくれる御朱印帳ならぬ、「御酒印帳」。

御朱印帳といえば、神社仏閣を巡り、社紋などの印を押してもらうものですが、こちらは公認酒蔵を巡り、お酒のラベルをもらって貼るものです。
公認酒蔵は全国にあるので、酒蔵めぐりにぴったりです。

店内をぐるっと見た後は、お楽しみの試飲。

無料のものから、有料のものまで4種類のコースがあります。
今回はせっかくなので、5種類のお酒が試飲できる特選コースをチョイス。

表の床几台に腰かけて、まち並みを肴にお酒を愉しむ贅沢なひと時。

一見難しそうな日本酒ですが、飲みくらべで感じる香りや味の違いが楽しくなってきます。
是非、酒蔵見学や試飲を通じて自分のお気に入りのお酒を探してみてください。

施設名 鳳鳴酒造
住 所 丹波篠山市呉服町46
TEL 079-552-6338
URL

https://houmei.wixsite.com/houmeisyuzou

営業情報 9:30~17:00
定休日 火曜日
専用駐車場 なし ※お車でお越しの場合は、「丹波篠山市歴史美術館」等をご利用ください。
アクセス JR福知山線「篠山口駅」から神姫グリーンバス「篠山呉服町」下車、徒歩すぐ。
舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口IC」から約10分。

3. 山名酒造

みなさんは、日本酒がどのように造られるかご存知ですか?
今回は1716(享保元)年に創業を開始した山名酒造で、杜氏の青木卓夫さんに製造過程を案内していただきました。
青木さんは高校時代、農芸化学科で酵母、麹菌の実験を行っていました。
授業の一環で見学に行った酒蔵で出会った杜氏の「酵母は生き物。造る人の心が映し出される」という言葉に心動かされ、卒業後は酒造りの道へ。一から手作業で行う酒造りを学び、30歳という若さで杜氏に。灘の酒蔵などで勤務した後、2007(平成19)年より山名酒造に入蔵。丹波杜氏として活躍されています。

さっそく酒蔵へお邪魔。
まずは日本酒の原材料である酒米を見せていただきました。

お酒の種類によって削る割合が違うそうで、これは五割削ったもの。
とても小さく、真っ白に見えます。
これは、中心にある心白というもので、組織がもろく、光を通さないため白く見えるそう。

そして、水は神池寺山から伏流する地下水を使用しています。

酒米を洗って、水に浸します。

そして翌日、酒米を蒸します。
食用のお米は炊くのに、なぜ酒米は蒸すのでしょうか。

それは、そもそも、食用のお米と酒米は成分が異なるため、蒸すことで発酵が起こりやすい状態になるから。
湯気が立ち込め、もうじき蒸しあがる酒米を、蔵人たちがいまかいまかとタイミングを見計らっています。

いよいよ蓋を外して蒸しあがった酒米をショベルでかき出し、放冷機に乗せていきます。

しゃもじを使って均等に慣らすと、上からリズミカルに麹菌をかけていく。

放冷機から出てきた酒米は麻布に包まれ、急いで麹室(こうじむろ)へ。

酒造りは時間との戦いでもあるので、全て早技。

麹室へ移動した酒米は、麹菌を付着させ、二昼夜かけて麹へと生まれ変わります。

室内は高温多湿で、カメラを持っていくとすぐに曇ってしまうほど。

数時間この中で寝かせ、その後、酒米の温度が均一になるように手で混ぜます。
大変な力仕事で、経験と温度を感じ取る鋭い感覚が必要な作業。

その後、2週間かけて酒母を造り、それをベースに4日かけて本仕込みを行い、酒母の上に蒸米、麹、水を足し、倍へ倍へと量を増やしていきます。

そうしてでできたもろみを20日間かけてじっくりと発酵。
プツプツと気泡が弾ける音と共に青リンゴのような甘い香りが立ち込めてきます。
ちなみにこのプツプツという気泡の音、蔵人の中では喋り声と言われており、動きが活発なら「元気に喋ってる」など、発酵具合によって違う声になるとのこと。
夜中も交代で2時間起きに見に行くのですが、夜は静かなので音がより鮮明に聞こえるそうです。

発酵が完了したら、大正時代から活躍する搾り機へ。

2日間かけて搾り出します。

搾ったお酒は瓶に詰められ、後は出荷を待つのみ。

私たちが飲む日本酒はこんなにたくさんの工程を経て作られているんですね。

青木さんにご案内していただく中でとても印象的だったのは、お酒造りに向けた、まるで我が子を見るような眼差し。
「酵母は生き物」
その言葉通り、一つ一つの行程に愛情を持ちながら、丁寧に造られたお酒。
一口飲むと、確かに杜氏や蔵人の人柄が映し出されるような、心も体も暖かくなる豊かな味わいでした。

施設名 山名酒造
住 所 丹波市市島町上田211
TEL 0795-85-0015
URL https://www.okutamba.co.jp/
営業情報 9:00~17:00
駐車場
定休日 年中無休(但し、1月1日・1月2日は休み)
アクセス JR福知山線「市島駅」から徒歩約10分。
舞鶴若狭自動車道「春日IC」から約10分。

4. 丹波杜氏酒造記念館

丹波地域の酒造りのことを深く知りたい方におすすめ。

ここは古くから丹波地域の酒造りを支えてきた丹波杜氏の歴史、昔ながらの醸造過程を知ることができます。

丹波杜氏とは日本三大杜氏の一つで、灘の銘酒を作り上げたことでも有名で、日本遺産に認定された「デカンショ節」の歌詞にも「灘のお酒はどなたがつくる おらが自慢の丹波杜氏」と書かれるほど。
ちなみに丹波杜氏は日本遺産(「伊丹諸白」と「灘の生一本」下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷)の構成資産の一つでもあります。

さっそく記念館に入ると杉玉がお出迎え。
杉玉は杉の葉をボール状にしたもので、新酒ができた目印とも言われています。
ちなみにこの杉玉、初めは緑色なのですが、時間が経つにつれて茶色になっていきます。
これは、飾り始める2〜3月は緑色で新酒の季節、夏になると薄緑色になり夏のお酒の季節、秋になると茶色くなり、ひやおろしの季節ということが分かります。
杉玉はお酒のカレンダーみたいなものですね。

かつて使われていた酒造りの道具たちは、一の洗米から九の貯蔵までを順を追って展示されています。
中でも目を引くのは杉の木で造られた大桶と麹室(こうじむろ)。

大桶は醪(もろみ)仕込みの工程で使われるものなのですが、大人3人が入れるほどの大きさ。なかなかこの大きさの桶を見ることがないので、ちなみに今はホーロー製桶が主流で、杉の木を使っている酒蔵は少ないんだそう。

酒造りで最も技術を要すると言われている麹造りが行われる麹室。
温度を保つために、壁には遮断材として籾殻(もみがら)が敷き詰められています。

他にも、今では歌われることのなくなった「酒造り唄」を聞くことができます。
丹波杜氏は時計がない時代、各工程の時間を測るために歌っていました。
長年、歌い伝えられたこの唄々は、機械化に伴い次第に歌われることはなくなりましたが、酒造りの歴史が詰まったバトンとして、現在も丹波杜氏組合が講習会や観賞会を開催し、後世へと受け継いでいます。
いろんな唄を聴きながら展示を見ると、酒蔵の空気感が伝わってくるので、是非聴いていただきたいです。

施設名 丹波杜氏酒造記念館
住 所 丹波篠山市東新町1-5
TEL 079-552-0003(丹波篠山市役所内丹波杜氏組合事務局)
URL https://www.toji.sasayama.jp/
営業情報 10:00~17:00(土・日・祝は16:00まで)
休館日 11月~3月の土・日・祝ならびに12/28~1/4
駐車場
アクセス JR福知山線「篠山口駅」西口から神姫グリーンバス「春日神社前」下車、徒歩約3分。
舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口IC」から約10分。

5. 狩場一酒造【秀月庵】

1991(平成3)年にオープンした直売所「秀月庵」では、常時10種類(季節限定品を加えると14種類)のお酒が購入できます。「スーパーやコンビニでもお酒は買えるけれど、自分の好みに合ったお酒を探すとなると難しい」と狩場一龍社長。「直売所なら“味の違い”や“飲み方”などを聞きながら、自分に合ったお酒と出会える」と語ります。生活スタイルの欧米化に伴い、日本酒が飲まれる場面も様変わりしています。狩場社長は酒造りを「伝統を守りながら、時代に応じて変化を続けることが大切」と言われています。「おいしく飲んでもらうために」と。

【銘柄紹介】
「秀月」は1957(昭和32)年三代目当主が蔵の上にかかる月に魅せられ商標を改名。
「秀」は稲が長くのびるさまを表します。酒米は全て60%まで精米して仕込み、貯蔵期間や濾過方法の違いなども合わせて、大吟醸、特別純米酒、特別本醸造、普通酒の4タイプが生産されています。

施設名 狩場一酒造【秀月庵】
住 所 丹波篠山市波賀野500
TEL 079-595-0040
URL https://www.syuugetu.jp/
営業情報 10:00-18:00
定休日 1月1日~3日
駐車場
アクセス JR福知山線「古市駅」から徒歩約15分。
舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口IC」から約10分。

6. 丹波・篠山酒造組合加盟社

兵庫県には地域ごとの酒造組合があり、丹波地域では全部で7社が加盟しています。

1867(慶応3)年、丹波鴨庄村で創業。1989(平成元)年から杜氏を務める荻野信人社長は酒造りヘの思いをこう語ります。「昔の酒はコメの質も悪かったのかも知れないが、飲んで行くうちに喉に引っかかるようなクセがあった。また翌日もしんどい。だから自分はとにかく“飲みやすいお酒をつくろう”」と。いまは息子さんと二人三脚で、酒造りに取り組んでいます。

住 所 丹波市市島町上牧661-1
TEL 0795-85-0488
営業情報 平日9:00-16:00
※訪問の際は事前連絡を。
定休日 土・日・祝(予約時は対応)
駐車場
アクセス 舞鶴若狭自動車道「春日IC」から約10分。

1956(昭和31)年に山口県で創業。1972(昭和47)年に現在地で工場の稼動を開始し、1985(昭和60)年に本社を移転しました。今年2月には63年ぶりの新銘柄「丹波櫻 特別純米」を発売。蔵人自らが丹波篠山で育てた酒米を仕込んで作ったお酒。杜氏の藤木章文さんは酒造りにかける思いを「先人たちの技を受け継ぎ、時代の変化に対応しながら、次世代へとつないでいきたい」と語ります。

住 所 丹波篠山市井ノ上字長屋ノ坪182番1
TEL 079-556-3158
URL https://sakuraichimonzi.com/
営業時間 平日8:30~17:00(不定休)
駐車場
アクセス 舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口IC」から約20分。

1974(昭和49)年から新たな製造掲点として、丹波杜氏の故郷でもあるこの地で工場の稼働を開始。「全国でも有数の大規模な工場ですが、品質の向上にも常に取り組んでいます」と杜氏の岡幹起さん。全国新酒鑑評会では在任12年の間、全て入賞以上で、金賞受賞も7回に及びます。

住 所 丹波篠山市今田町本荘堂ヶ谷1-19
TEL 079-597-3161
URL https://kizakura.co.jp/
備考 ※丹波工場では見学や販売等を行っていません。

7. 丹波の器で日本酒を楽しむ

五感を使って味わう日本酒。丹波地域ならではの酒器の楽しみをご紹介します。

お酒は器によって味が変わるとも言われています。
本来の味をストレートに楽しみたいなら、無味無臭で味の変化がないガラス製の酒器がおすすめ。

ということで、今回は地域の名産品である黒豆の灰を原料に使用した「黒豆硝子」の酒器を造られている「ガラス工房 るん」にお伺いしてきました。
黒豆硝子ではありませんが、特別にグラスを作る様子を見学させていただいたのでご紹介します。

工房には半年かけて自作した「溶解炉」が鎮座。

この溶解炉を使用して、ガラスを溶かしていきます。

溶解炉の温度はなんと1,100度。
扉が開くと、ブワッと熱気が工房内に広がります。

熱されたガラスに、拭き竿を使って息を吹き込んでいきます。

造り始めてからわずか15分程度で、あっという間にグラスに変身。
あとは底を竿から外し、徐冷庫で冷まして完成です。

グラス造りの工程を見せてもらった後は、いよいよ黒豆硝子とご対面。

これは材料の黒豆。
なんと、工房の裏手にある畑で自家栽培されているそうです。

この黒豆を焼成し、灰状にして発色剤に使用します。

黒豆硝子のぐい呑み。
左から浅葱(アサギ)、翡翠(ヒスイ)、黄金(コガネ)、琥珀(コハク)。
なんと同じ黒豆から4色のガラスができるんです。
配合によって色が変化するそうですが、真っ黒な黒豆からこんなにカラフルな色が出るなんて不思議ですね。
ちなみに、その年の黒豆の出来によって色合いも変わるようです。

ぐい呑みと片口を並べてみました。
右側の片口はクチバシのところの水切れが良くなるように造られています。
光が当たると影がまるで気球のよう。

さっそくお酒を注いでみました。

片口からぐい呑みに入れたときのトクトクという音と共に、お酒の香りが広がります。
光が当たり、キラキラと輝くお酒はうっとりする美しさ。
口を付けるとひんやり冷たくて、グイッとお酒が進みます。
お酒は味覚、嗅覚、聴覚、触覚、視覚の五感で楽しむものと言いますが、この酒器に入れることによってより、それぞれの魅力が倍増。
ちなみに私のおすすめは酒器を冷蔵庫でキンキンに冷やして飲む冷酒です。

2018年に発売が開始されて以来、ファンが多く、中には旅行先にも黒豆硝子の酒器を持っていく人もいるんだとか。

併設されている「ギャラリー彩」では、様々な作品を見学、購入することができます。

黒豆硝子には他にも様々な形のものがあるので、お気に入りのガラス工芸品を探して見るのもおすすめですよ。

住 所 丹波篠山市西谷1-5
TEL 079-506-1380
URL http://www.glass-rung.com/
営業情報 10:00~17:00
土・日・月曜日営業(年末年始、展覧会期問中は休業)
駐車場
アクセス 舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口IC」 から約10分。

築150年の町家を改修した店内は、時間がゆっくりと流れている感じ。

住 所 丹波篠山市立町93
TEL 090-2065-4595
URL https://sasayama1983.jimdofree.com/
営業時間 【昼】11:30~14:00(ラストオーダー13:00)
【夜】17:30~22:00(ラストオーダー20:00)
定休日 月曜日
駐車場
アクセス JR福知山線「篠山口駅」から神姫グリーンバス「下立町」下車、徒歩約3分。
舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口IC」から約10分。

酒器だけでなく食器の多くが丹波焼や丹波篠山在住の作家によるもの。

住 所 丹波篠山市二階町6
TEL 079-552-2158
URL http://takasago-ryokan.net/
営業時間 【昼】11:30-14:00
【夜】17:30-21:30
駐車場 有(4台)
アクセス JR福知山線「篠山口駅」から神姫グリーンバス「春日神社前」下車、徒歩約1分。
舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口IC」から約10分。

丹波焼や王地山焼などの中から、気分に合わせてお猪口を選ぶのも贅沢。

住 所 丹波篠山市河原町160
TEL 079-552-2808
URL http://hanakoushi.jugem.jp
営業時間 【昼】11 :30-14:30
【夜】17:30-20:00
定休日 月曜日(祝日の場合は翌日、定休前日の夜)
駐車場 有(10台)
アクセス JR福知山線「篠山口駅」から神姫グリーンバス「本篠山」下車、徒歩約3分。
舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口IC」から約10分。

「Hyogo Sake 85」は、病気に強く、地球温暖化による高温にも耐性がある品種として兵庫県が育成した酒米。県内酒造や杜氏からは「香りが高くすっきりとして、のどごしが良い」と高評価を得ており、今後、丹波地域でも使用が拡がる見込みです。品種名は、最近の日本酒の輸出促進を考慮するとともに、外国に酒どころ「兵庫」をアピールするため、英語表記にしました。

竹田川源流の一つ、三宝(みたから)ダム(丹波市)の管理トンネル内は、温度が15度と酒の熟成に最適。同水系の水を使用する三酒造(山名酒造、西山酒造場、鴨庄酒造)と兵庫県丹波県民局が連携し、「Hyogo Sake 85」等を原料とした日本酒などを貯蔵・熟成させます。令和3年秋の蔵出し時にイベントを予定。今後、丹波地域の『三宝』として付加価値を持たせてPRしていきます。

お酒にはどんな種類があるの?
辛口と甘口の違いは?

日本酒の辛口、甘口には糖度が大きく関係してきます。 日本酒度、酸度という評価基準もあり、日本酒度は糖分少ないと「+」、糖分が多いと「−」と表示されます。酸度はお酒に含まれる酸の量で多いと辛く感じ、少ないと甘く感じます。この二つの基準を照らし合わせることで、どんなお酒なのかがわかります。

日本酒に使用されるお米は食用のお米と違うの?

日本酒の原料である酒米は食用のお米とは違う、お酒専用のお米です。
食用のお米は、水分やデンプン、タンパク質、脂質がバランスよく配合されたもの。
酒米はタンパク質や脂質が少なく、大粒で、お米の中心にデンプン質の塊である心白がある、お米作りに適したもの。同じお米でも用途によって全然違うものなんです。

お酒が苦手な人でも飲みやすいお酒の種類は?

お米と米麹、水だけで造られた純米酒がおすすめ。
まろやかで、お米のうま味を感じることができます。悪酔しないので、次の日も二日酔いしにくいそう。

お酒の保存方法は?

種類によって保存方法が異なるお酒。
基準は火入れ。火入れとは加熱処理のことで、日本酒の品質保持のために行われます。
お酒の中の酵素は瓶に詰めた後も発酵を続けます。飲み頃に火入れをすることで、一番美味しい状態を保つことができます。
生酒は火入れをしないため、温度によって味わいが変わってしまうので要冷蔵。
火入れしたお酒は常温保存となります。
お酒のラベルにも記載されているので、保存する際にはチェックしてみてください。

※掲載している情報は、令和3年3月1日現在の内容となります。

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